ジェレミー・シーゲルの株式投資 第4版の感想2(8章以降)
前回の記事の続きです
tamesen-earlyreitire.hatenablog.com
pp.134-149 各国の株式リターンと実質GDP成長率の関係性
負の相関がある。シーゲルがいうには、EPSやDPSが株価の決定要因だが経済成長はそれを増やすとは限らない(総額が増えるだけかもしれない)
背景としては、経済成長には設備投資が必要で、それは金利負担増加やEPSの希薄化を招く
米国株においては、実質GDP成長率は3.57%なのに、EPSの成長率は1.88%で約半分、
DPS成長率は1.32%(配当利回りは4.58%、配当性向は58.17%)
→これらを見ると、EPS成長率が思ったより低くて、驚き
過去200年間の株式リスクプレミアム(長期国債とのスプレッド)は3~3.5%
歴史的にはPER15が平均だが、昨今の環境では適正とは言えない
無リスク金利が2%でリスクプレミアが3%ならPER20が適正
(つまり低インフレ、優遇税制などの環境では高PERも正当化可能)
→これは、よく聞く話ではあるが金融緩和状態の現在でも同じ理屈だろうから、
忘れずに頭の隅に置いておきたい
pp.150-166 ファクター投資
小型株効果、PER効果、いわゆるダウの犬戦略について確認している
小型グロースは全然だめ、PBRはPER等より効かないとのこと
→PBRが弱い理由として、R&Dが費用計上される点、資産の市場価値変化を反映する
のが遅い点を指摘しているが、それをいうなら、会計上の利益も操作できるし、
配当利回りも経営者が恣意的に決めているので、どうなんだろうかという気がする
なぜいわゆるFF3の分析をしないのだろうか?FF3でコントロールした状態で
配当効果やPERを効果を見るべきではないだろうか?
p.167 IPO銘柄について(1968~2000)
ウォルマートを1000ドルで買った人は2006末には137万ドルになっている
この種の宝くじ銘柄は目を引くが、公開後3年間保有した場合の分析で、当たり年であってもせいぜい小型株indexに等しいくらいで基本的に負けるらしい
→例えば、IPOのたびに100ドル買って、buy&holdして場合と単純にその分index買った
場合の比較などがあればもっと面白いと思われる
p.175 グローバル市場について
GDPの国別シェアを見ると、先進国と途上国が半々
時価総額で見ると、先進国が93.4%(うちアメリカが43.6,西欧が30.8)
→CAPMを信じているなら全てのリスク資産からなる時価総額加重平均ポートフォリオ
を持てば良いわけだが、実際は上場企業ベースでしか持てない
(理論上はリスク資産は株とか関係なく、リスク性資産はすべて持つべき)
上記を考えると、各国のGDP加重で株を保有したほうがCAPM信者としては
理屈に沿うと思われる(債券やコモディティの問題などもあるが)。
p.182 アメリカ株onlyと世界株に投資した場合の比較(ドル建て、1970~2006)
米国のリターンは10.84%、MSCI_EAFE(先進国)は11.57%で高い
(特に欧州が12.27%と高い、日本もバブル崩壊あったが、11.47%)
効率的ポートはアメリカ62%、EAFE38%の比率
minvolはアメリカ77.5%、EAFE22.5%の比率
→ドルベースだから?肌感覚では普通にアメリカ株の方が諸外国よりいいイメージ
だったので意外な結果
p.238 ダウ平均が5%以上動いた日は126日
しかしながら、重要なイベントがあったのはうち30日に過ぎない
→これもヴァンガードか何かで見た記憶があるが、印象より少ないが、1929年は
複数回出ているし、ボラティリティクラスタリング現象があるので、鵜呑みも危険
(最初のトリガーはイベント起因だったりするので)
p.245 1948年以降では、民主党政権の方が共和党よりインフレ調整後利回りがよい
→これは意外。なんとなく共和党のほうが投資家にfavorなイメージだったので。
公共事業や左翼的な政策でお金をガンガン使うからだろうか?
p.317 200日移動平均戦略のバックテスト(1886~2006)
ダウ終値が200MAより1%以上プラスなら株を購入、-1%以上下回ったならcash化(短期国債)。buy&holdだと全期間でリターン9.68%,リスク21.5%
上記戦略は取引コスト控除前で10.21%、16.7%、控除後で8.63%、17.3%
→リスク・リターン効率では、buy&holdが0.45,控除後が0.49くらいだから、シンプルな戦略であるが、上手く行ってるのがけっこう意外
直近17年くらいは上手く行ってないそうなので、さすがに現代ではMAなどのシンプル&有名な手法は厳しいのだろうかとも思うが、ナスダックは上手く行ってるのでよくわからない
p.378 S&P500組入発表時の値動き
2000年9月のSPの発表によると、追加公表から組入までに平均8.49%上昇している
指数に追加10日後平均3.23%下落する
しかし、一年後には、下落分は相殺され、平均8.49%上昇している
近年では発表直後の値上がりは4%
→この現象自体はよく知られている。近年の上げ幅が縮小しているのはおそらく、クライテリアが公表されているので、証券会社などが組入予想を出している関係で発表までに一定程度すでに値上がりしているからだろう。その意味ではインデックス投資家が割高な価格で買っていることには変わりないと思われる
関連するリサーチ
https://www.etf.com/publications/journalofindexes/joi-articles/2009.html
pp.380-383 ファンダメンタル加重
時価総額加重は問題がある(流動性、税金対策などノイズ取引の影響)
例えば、利益で時価加重したファンダメンタル加重のパッシブ投資はどうか?
MSCIがGDPウェイト、パワーシェアーズが売上やCFなどの指標に基づくファンドを販売している
1964-2005までで、全米国株配当加重は11.88%で時価加重より1.23%もリターンが良い
→ここでのパッシブは文字通り受け身という意味で、予め定めた手続きどおりに運用し、個別判断がないという意味。
ファンダメンタル加重って最近は全然聞かないですよね。スマートベータとか昔流行りましたが。。。個人投資家でシーゲル信者は多い印象ですが、あまりファンダメンタル加重投資をされているという話は聞きませんが、なぜなんですかね?
シーゲル信者=高配当株のイメージ
https://search.sbisec.co.jp/v3/ex/etfforeign_PXF_130627.pdf
pp.386-391
投資を成功させる指針
1 期待は過去の範囲で、200年間のインフレ調整済み株式利回りは6.8%、PERは15
2 投資期間が長いほど株をもて
3 株式ポートの大部分を国際分散した低コストindexファンドに
4 1/3以上を米国株以外に。高度成長の国は利回りよくない
5 グロースよりもバリュー
6 自分の気持に負けそうなら確固たるルールを