インデックス投資とゲーム理論
インデックス投資における適切な議決権行使問題について考えます。
(あまり深く考えてない雑談的な記事です)
前提:
- 資産運用会社の投資スキルは等しくTE水準も同じ
- 適切な議決権行使をするにはコストが発生する
- 適切な議決権行使によって企業価値が向上する
- 2のコストの総和より3の企業価値向上の総和の方が大きい
- 自社だけが適切な議決権行使をしても結果に影響しない
- インデックス投資家はfeeで投資信託(資産運用会社)を選ぶ
まず、簡単に議決権行使について解説します。個別株を取引してる方は株主総会が開催される時に、この議案に賛成ですか?反対ですか?という用紙が届くと思います。
アレの話です。
前提の妥当性
- 前提1については、厳密には不成立ですが、概ねTE水準も同程度とお考えください(これがないと、オペレーションミスをしない、TEが低い資産運用会社を選ぶとか当たり前の話が出てくるので)
- 前提2については自明に成立しますよね?何も考えずにすべて賛成するのと真剣にこの議案がいいのか考える場合には当然時間等がかかりますので。
- 前提3も真剣に考えた結果裏目に出るケースもあるでしょうが、平均的には企業価値は向上するでしょう。
- 前提4は前提3の補足的な仮定で、各機関投資家が意思決定に払うコストの和より、企業価値向上の和の方が大きいという仮定で、これは適切に選んだところで企業価値がほとんど向上せず、意思決定コストのほうが大きいと経済全体としてやる意味がないので入れています。
- 前提5は、議決権行使は多数決ですので、一社だけが反対しても他社が何も考えずに賛成だと議案は通ってしまうという話です。今回は適当に全部反対するケースは考えてないです。実際、株主総会の議案は賛成されることが前提だからです(個人投資家の変な議案は除いて、一般的には賛成多数です)
- 前提6は多くの人がそうだと思います。実際slimシリーズなど信託報酬が低い会社が人気ですし、普通に考えて同じインデックス運用ならfee低い会社を選びますよね。
囚人のジレンマ的な話
さて、貴方が機関投資家(インデックス投資信託を運用する立場)なら、適切な議決権行使を行うべきでしょうか?
ゲーム理論的に考えてみましょう
こちらについては、状況を考えると分かると思いますが、NAVの部分について補足。
NAVは純資産総額の意味です。この件においては投資信託が持っている株の時価総額くらいの意味です(厳密には違いますが今回はこれでOK)。
- 左上のケースにおいては、勢力は同じなのですが、企業価値が向上したため株価が上昇した結果、NAVが増えます(パレート最適)
- 右上は企業価値も増えないし、他社にシェアを奪われ踏んだり蹴ったり
- 左下は一番ズルく立ち回ったケースですね
- 右下はみんなが自分だけ損することを警戒したケース(ナッシュ均衡)
ちなみにGPIFは適切な議決権行使を含むESG(SDGs)に積極的ですが、GPIFの場合はシェアを他者に奪われるという危険性がないため上記のフレームワークとは異なります。純粋に適切な議決権行使にかかるコストと、やった場合の企業価値向上を比較して、一般の資産運用会社の行使具合によりますが、GPIFは規模が大きいのでおそらく後者のほうが大きいでしょう(だから、GPIFは近年そのあたりに力を入れてるのでしょう)
解決策?
ナッシュ均衡点の右下からパレート最適の左上に行くにはどうすればいいでしょうか?
一つの解決策としては、法令等で義務化することですね。
このあたりが近年、金融庁が資産運用会社に議決権行使についてあれこれいう背景ではないでしょうか?ただこれも、本当に適切な議決権行使かどうかは難しいので、それっぽい規定だけ作って実際はコストをかけずに左下に行こうとする会社も存在すると思いますし、そんなとこまで政府が企業に干渉していいのか?という気もします。