マーケットディーパーのTQQQ(3倍レバナス)に関する動画の疑問点
元動画はこちら、29分ごろから
https://www.youtube.com/watch?v=KP80Nx--VAg&t=2642s
はじめに言い訳
経歴的に岡崎さんはすごい詳しいだろうし、私はあまりマーケットメーカーについて、詳しくないのであまり自信はない
登場人物整理
まず、登場人物について整理しようと思います。
・個人投資家(TQQQを買ってる人)
・Proshares(TQQQを運用している会社)
・ゴールドマン、ソシエテ等(ProsharesとIndex swap契約をしてる外資系証券)
・マーケットメーカー(TQQQの流動性を供給してる人)
・option trader(後半に出てくるput やcallを買ってる人、企業)
・プライムブローカー(レバレッジ取引をする人に与信する外資系証券)
どうやってこの人達が利益を得るか
・個人投資家:TQQQを安く買って高く売る(売りたい)
・Proshares:日本で言う信託報酬に該当するfeeを個人投資家からもらう
・ゴールドマン、ソシエテ等:index swapは通常feeがかかって、契約している想定元本に応じて、Prosharesのファンドからお金を貰う
・マーケットメーカー:ここは詳しくないから間違っていたら、ごめんなさい。流動性を提供(板を厚くする)ことで、インセンティブ等をもらう(以下は東証の資料)
https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/market-making/nlsgeu000002vwg1-att/nlsgeu000002vz4q.pdf
index swapの取引業者がマーケットメーカーをしている場合もあるが、チームとしては別れているはず
・option trader:色々手法はあるが、optionの売買で利益を得る
・アービトラージャー:option traderと兼ねてる場合あり。
理論上の価格と比べて不当に高くなったものを売って、もう片方を売る。例えば、日系平均先物が今の現物価格から計算される値より不当に高い場合、日系平均先物を売って、現物を買えば儲かる。optionならput call parityなど
上の動画だともう少し広い意味で日系平均とJPX400を比べて片方が割高で片方が割安みたいなケースも含めて、アービトラージと言ってる。厳密にはこれはアービトラージでなく、単なるアルファ追求だが業界でもしばしば真のアービトラージ機会は少なすぎてこのような言い回しはしたりもする。
・プライムブローカー:optionや先物等をする人に与信することで、取引をしてもらい売買手数料等をもらってるはず。あと、総合的に事務管理してるのでそれでfeeをもらってるはず(ここもあまり詳しくない)
動画について
①index swap
35,36分ごろですが、index swap取引相手がどうやってるのか分からないとありますが、これはおそらく普通にポジションをもってるだけと思います。index swap相手の証券会社の方でonbalance、レバをかけるには通常先物を使います。index swapは先物よりコストが高いです。いっぽう先物では流動性等が低い商品でもindex swapはやってもらえます。TQQQができたのは10年以上前ですし、NASDAQ100先物の流動性等がTQQQの運用的に不十分なのでindex swapをしていると推測します。
②ITMポジション
37分~、この辺はあまり感覚ないですが、総建玉のうち期近が多いのはふつうだし、TQQQは下がっているし、今後も下がる見通しの人が多いでしょうから、putが多いだけと感じます。SPYのcallが多いのはTQQQのputを単独で持つと、上がったときに勝てないので相対的に下がりそうなTQQQのputを持って、相対的に上がりそうなSPY callをもって、相場全体の動向によらず儲けようoption traderは考えているのではないでしょうか?この動きはマーケットメーカーは関係ないはずです。なぜならマーケットメーカーはあくまでETFの流動性を提供しているだけなので。
動画内で岡崎さんはマーケットメーカーと上記のアービトラージをしているのでは?と言っています。個人的には同じ会社でも別の組織がやっていると思いますし、別にそれはProshares側には利益はないので、こういうアービトラージャーがいるからと言ってマーケットメーカーを儲けさせるための商品というのはおかしい思う。
上記のような現象はTQQQに関わらず、SP500と日系平均、日系平均とTOPIXとか色々なところで発生しているので。
③プライムブローカー
43分頃のプライムブローカーのくだりは、こういうアービトラージャーは通常レバレッジをかけて取引をします。それの管理、与信を行ったりするのがプライムブローカーで外資系証券会社がプライムブローカービジネスもやってます。
ただこれを裏を引いてるというのはどうなのでしょうか?新しい投資商品ができてそれが人気になれば、当然それに派生するoptionも出てきますし、売買が活発になれば証券会社は儲かります。Prosharesが証券会社を儲けさせるためにTQQQを作るということはないでしょう。
疑問点等
繰り返しになりますが、TQQQをつくるProsharesにはわざと割高な商品を作ったり、TQQQホルダーを損させるあるいは利益を減らすようなインセンティブはないので(同じような運用をしていてTQQQだけパフォが悪いと他の会社のETFに投資家は鞍替えしてしまう)、index swap等を使っているのも理由があるでしょうし、マーケットメーカーやプライムブローカーに対して、Prosharesが得をさせるような動きをする理由はないと思いますし、裏で糸を引いてるとかそういうレベルのことはないと思いますが岡崎さんはあると思っているようなのでもう少し詳しく聞きたいなと感じました。
もちろん、アービトラージャーはいるでしょう。でもそれは現実の非効率な市場ではアービトラージ機会があるので、それを追求する業者がいるのは当然でしょう。また、真のアービトラージの機会は少ないので、それをいち早く見つけるために各種設備投資等もやっているはずです(計算スピード命の業界でしょうから)